
脊椎すべり症による神経圧迫 第二章
レントゲン撮影をしないと、患者の椎体がずれているのか確認することができないため、脊椎すべり症を予防することは難しいです。予防を目的に一般の人でも脊椎のレントゲンを定期的に撮影しておくべきかは意見が割れますが、大事なことは、もし背中の痛みが二週間以上続いたり、同じ側の足ばかり痛みが走ってふくらはぎがずっと痛むようなことがあれば、専門医に診てもらうべきです。
手術前と手術後の患者の脊椎の様子を比較する写真

手術前のレントゲン写真。前かがみの姿勢で第4、第5椎体のずれが認められる。

手術後の同じ患者の脊椎のレントゲン写真。(女性、56歳)
もしあなたの背骨がずれていても驚く必要はありません。あなたのやるべきことはそのずれの程度が大きいか、さらにずれる可能性があるか、背骨がまだ丈夫か、背筋はどれくらいあるか、そして背骨は日常的な活動にどれくらい長く耐えられるか、を知ることです。
脊椎すべり症の検査をする医師は、患者の腰周りの脊椎を支える筋肉(Paraspinal Muscle)の強さから、脊椎の靭帯や背筋の慢性炎症によって結合組織があるかどうか、結合組織がどこにあるか、神経線維が圧迫されることで足の筋肉が弱っているかまで調べる必要があります。
これらの情報は患者の日常生活と継続的な治療に反映されます。背中を使う活動にも注意が必要です。頻繁に背中を曲げたり反らせたりしてはいけません。また重いものを持ち上げたり、太ることも良くありません。骨密度を保つ努力をすること、そして、最も大切なのは丈夫な背筋のためにActive Training Muscle Exercise Typeという方法で正しく筋肉トレーニングをすることです。Active Training Muscle Exercise Typeは衰弱した筋肉を早く元通りに回復させる唯一のトレーニング法です。この筋肉トレーニング法については説明するのに時間がかかりますので、またの機会に詳しく説明したいと思います。

整形外科専門医 ソムサック ラオワッタナー医師による背筋のトレーニング法
椎体がまだ大きくずれていない場合は、普段通りの生活を送ることができます。しかし、もしあなたが体を大切にしないで、体重が増えたり、前述したアドバイスに従わなかったりすれば、年々背骨がずれていきます。神経が骨に圧迫される可能性も増えてきます。そして最終な治療法である手術をせざるを得なくなります。手術を受ける前に、手術におけるリスクを評価します。この評価検査は詳しい身体検査であり、内科医、心臓外科医、場合によっては患者の持病の専門医により行われます。最後には麻酔医からの評価があります。
脊椎すべり症の手術による治療は、大きく三段階に分けられます。

第4、第5椎体がずれて神経を圧迫している様子
第一段階(Reduction and Fixation Step) この段階の手術は問題のある椎体を固定して安定させ丈夫にします。また、特殊な金属(Medial Grade Metal)を使い、椎体を支えるような形でずれがあった椎体を元の位置に戻します。この段階での手術が成功するかどうかは金属による固定に耐えられるだけの骨密度があるかどうかにかかっています。骨密度に問題がある人、骨粗しょう症になっている患者では、金属の固定が不安定で骨の固定ができないため、第一段階の手術を受けることはできません。第二、第三段階の手術を行うことになります。

神経を圧迫していた椎体が除かれ、強さを補強するための金属がずれのあった骨の両側に設置されている。
73歳の患者で、手術後は脊椎が元の位置に戻り、背中がまっすぐに整復された。
第二段階(Decompression Step) この段階の手術は、神経を圧迫しているはみ出た椎体や結合組織を除去することが目的です。この段階の手術はとても大切です。血管が十分な栄養を神経細胞に運べるように、神経を圧迫するものを全て除く必要があるからです。この手術によって、炎症を起こしていた神経が早期に回復することができます。分離した椎体に圧迫されていた神経細胞を正常に回復させることを目的とした治療段階です。
第三段階(Fusion Step) この段階の手術は問題のあった椎体同士を骨片(bone Graft) でつなぎます。骨片(bone Graft) は第二段階の手術で取り出した骨か、人工骨(Synthetic Bone Graft)を用います。小さい骨を脊椎の間に配置し、ずれが生じる椎体の間を自然につなぐための糊の役割を果たします。これにより、背骨を数百倍丈夫にさせます。この段階の手術では注意する事項がたくさんあります。例えば、脊椎のどの辺りを繋げるか、何点、どの角度から繋げるか等です。この段階は不安定な二つの椎体を前より丈夫にさせることを唯一の目標にしています。よってこの段階は脊椎の安定化を作るための手術とも呼べるでしょう。
手術後最初の2-3日は回復のためにベッドで安静にします。その後はゆっくりと上半身を起こしてベッドにもたれかかることを始めます。そして少しずつ歩行の練習を始めます。入院期間は合計で5-8日になります。
退院して1か月間休養したら、リハビリを開始しましょう。Active Training Muscle Exerciseを真面目にやり、背筋を鍛えます。必ず継続し、怠けたり雑にやってはいけません。患者それぞれが、日常生活を送る上で必要とされる筋量を正しく維持することが大切です。手術で改善させられるのは、背骨と神経だけです。筋肉は改善させられません。毎日できるだけ背筋を鍛えましょう。そしてこれだけは忘れないでください。腰など他の部分の背骨はまだ大丈夫でも、日常生活を送る上で必要とされる筋量が維持できないと同じように椎体のずれを招き、手術がまた必要になるかもしれませんよ。
手術で背骨が頑丈になった後、神経が回復し筋肉が保たれると、手術前に比べ症状が劇的に改善します。ふくらはぎや背中の痛みなしに長距離を歩いたり長時間立っていたりすることができます。予想外かもしれませんが、人によっては再び好きなスポーツを楽しむことができます。
腰の痛みから解放されましょう
